「ここきち」応援団

お野菜は毎日たくさん食べます。こだわりは全部使い切ること。 キッチンでお料理することは幸せと深く結びついています。

--多方面でご活躍の阿木さん。コーラスグループも主宰されていらっしゃいますよね。
 そうですね。アマチュアコーラスグループ「ひふみレインボー」は、8年前に結成されました。昨年は、4月に渋谷オーチャードホールで開催された、交通遺児などの子供たちを支援するチャリティキャンペーン、「真心おたがい様コンサート」や、埼玉県の春日部市で行なわれた福祉支援コンサートなどに出演し、忙しかったですね。発声練習は最低でも週に2回、多い時は4回くらいしています。だんだん声が出るようになるのが面白くて。音域が広がってスキルが向上していくのがわかると、さらにやりたくなるんですよね。来年も3月に発表会が予定されているので、1月、2月は猛練習です。
--ところで阿木さんは、大の野菜好きということですが?
 好きな野菜は、大根やごぼうなどの根菜類。ありがたいことに、地方の方から送っていただくことが多いんですよ。ライフワークとして続けてきた「FLAMENCO曾根崎心中」の公演や講演会などで全国を飛び回っているので、そこで知り合った方達が送ってくださいます。まさに産地直送。この間は、山芋やごぼうやさつまいもや…たくさんいただいて。お菓子は事務所のスタッフと分けるんですけど、お野菜は大好きなので全部持って帰ります(笑)。毎日かなりの量を食べます。「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言うし、こんなに食べて大丈夫かな?と思うくらいです。
阿木燿子さん
--お料理される時にこだわりはありますか?
 こだわりは、丸ごと使うことです。皮は剥いたり剥かなかったりしますが、大根の葉っぱは食べます。それに食材を冷蔵庫の中でだめにするのは心が痛むから、全て使い切るように心がけています。
 料理をする時は、イメージから入ります。そのために工夫するのが好き。料理って最高にクリエイティブなものだと思います。この間は、スモークサーモンがバラの花のように盛ってあるのを見て、大根を薄くスライスして水にさらし、輪になったものをサーモンの回りに花びらのように乗せたらどうかしら?上にレモンの輪切りを置いたら生花みたいできれいだろうなって。その後で、この料理を成立させるための味付けを考えます。お皿の中に物語が広がるようなお料理が好きですね。野菜はいろいろな物語のイメージを広げてくれます。
--では最後に、阿木さんにとっての「心のキッチン」とは?
 私の潜在意識の中にあるキッチンはメルヘンみたいなものかな。キッチンは、ただ単に食べるためのものを作るのではなく、おいしく食べるためのものを作る場所。幸せへの道すがらのような感じかしら。料理をつくらないことも、一食一食を大切にして食べないことも、私には考えられません。食って人間にとって根源的なものだし、料理は幸せと深く結びついているものだと思います。見た目が美しくて、いい匂いがして、五感全てに訴えかけてくる。私にとっては、料理することもキッチンも、喜びそのものですね。
 農家レストランはとても素敵だし、興味があります。「ここきち」は、心の底から応援したいですね。土から成るものは食の基本だと思うし、生きていくうえで欠かせないもののはず。なのに農作物を作る農家の方達が、夢を持てなかったら寂しいですよね。農業をやることが喜びで、それがそれぞれの喜びにつながっていったらいいなと思います。
阿木燿子さん
profile
宇崎竜童氏と結婚後、『ダウン・タウン・ブギウギ・バンド』のために書いた曲「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で作詞家デビュー。以後、多くのアーティストに詞を提供し、ヒットにつなげている。女優としても、多くのドラマ、映画、舞台に出演。また、近松門左衛門の「曽根崎心中」とフラメンコを融合させた作品「FLAMENCO曽根崎心中」をプロデュースし、上演を重ねている。同作品は2001年度の芸術祭舞踊部門で優秀賞を受賞。2004年3月には、スペイン・へレスにて日人初のフラメンコフェスティバルに参加。その他には、小説やエッセイ等の執筆活動、「TANNKA 短歌」で初の映画監督に挑戦するなど、幅広い活躍を続けている。2006年、紫綬褒章を受章。
阿木燿子さん