

1970年東京中野区生まれ。東京都中野区に果実専門店として店舗を構える「フタバフルーツ」の三代目店主。「フルーツアドバイザー」の資格を持ち、果物の食べ方や産地、安全性といった知識だけでなく、フルーツの持つ「楽しさ」や「おいしさ」などを広げていくべく、フルーツと音楽をメインにしたパーティイベント「Viva La Fruits」の企画や「Farmer’s Market @ GYRE」への出店のほか、生産者と連携した「稲刈りツアー」企画など様々な活動を展開中。




日本の食の風景「こころのキッチン」を守り、育てていくために、
様々な立場の、様々な人たちが、様々な活動を続けています。
今回は、果実専門店の店主である一方、音楽とフルーツをメインにしたパーティーイベントを企画するなど
フルーツを通じた多彩な情報発信を続ける成瀬大輔さんから話を伺ってきました。
様々な立場の、様々な人たちが、様々な活動を続けています。
今回は、果実専門店の店主である一方、音楽とフルーツをメインにしたパーティーイベントを企画するなど
フルーツを通じた多彩な情報発信を続ける成瀬大輔さんから話を伺ってきました。
「お前のバックグラウンドは果物」
その言葉で、ハッとなりました。
うちの店は祖父・父からと続いてきたわけですが、若い時は、店を「継ぐ」という意識もすごく薄くて、店を手伝いながら、あまり考えずに、遊び回ったりしていた、いわゆる「だめな三代目」でした(笑)。ただ年齢を重ねるごとに、自分の土台が見えなくなってきたんですね。自分はいったい何を売りにして生きていけばいいんだろう、といった感じです。
そんな頃に、一緒にサーフィンをしていた仲間に言われたんです。
『お前のバックグラウンドは、おじいちゃんの代からやってる果物だろ。何気なく接してるかもしれないけど、みんな大好きなんだぞ』って。そのひと言で、ハッとしたんですよ。それ以来、自分が果物屋に生まれた意味として、何か自分なりに伝えていかなくちゃいけないと考えるようになったんですね。
柿を売っていて『これは何なの?』と聞かれることなんて、自分が子供のころは考えられなかった。『どうやって食べるの?』『どうやってできるの?』といったことも併せて、しっかり伝えていきたいなと。
そんなことを模索するなかで、いろいろな活動を始めるようになったんです。
フルーツの楽しみ方をもっとたくさんの人に伝えたい。そんな思いから始めたのが、フルーツと音楽をメインにしたパーティイベント“Viva La Fruits”でした。
フルーツは彩りも綺麗なのでまず目で楽しんでもらって、香りを感じてもらって、口に入れて、味わってもらって…。そこに音楽を加えることで、五感をフルに使って楽しんでもらおうと。

若い生産者の方々と出会い、
その頑張る姿を見て感動しました。
“Viva La Fruits”は、友人のレストランで月に1回のペースで2年くらい続けてきたんですが、今年の6月でいったん「区切り」をつけて、今度は、果物を食べ比べてもらったり、果物と合うお酒の組み合わせを知ってもらったり、といった果物のワークショップ的なものにシフトしています。
父からは『そんなことをやっても…』『もっと地道にやるべきだ』と言われたり、ぶつかったりもしたんですけど(笑)、今の商店街や市場などで感じるのは、60歳以上の人たちばかりで、まったく若い人がいません。将来的なことを考えた時に、父親と同じことをやっていては先が見えてしまうんです。
人間、ひとりでは生きていくことはできません。ものを売るにしても、何にしても、仲間がいることで自分が活かされることがあると思うんですよ。自分ができないことであっても、みんなが自分の得意なものを持ち寄って、何か面白いことができるんじゃないかと。まずは果物というものを食べてもらうところから始めなくちゃ、という気持ちから始めたパーティイベントだったんですが、こうしたことを続けていくことで、何か面白いことをしてるなと、みんなが興味を持ってくれるんじゃないかなって。
それに、そうした活動を続けていくなかで出会った仲間たちの誘いで、都心でのファーマーズマーケットにも出店するようにもなり、今までやってきたことが少しずつ実になってきたと思うんです。
これまで生産者に出会う機会もありませんでしたし、自分からその機会を作ろうともしていなかったんですけど、ファーマーズマーケットに参加して、自分に年代の近い人たち、若い人たちがこんなに一生懸命やってるんだってことに感動しました。
パーティイベントでも、果物だけじゃなくて野菜も出したいと思うようになって、ファーマーズマーケットで知り合った茨城の生産者の方に、野菜を食べてもらうところからやろうよ、って声かけて、彼の野菜を提供してもらったり。
先日、稲刈りツアーを企画して、集まった人たちと一緒に彼のところで稲刈りを体験したりしてきました。果物にかぎらず、口に入る前、お店に並ぶ前のことを知ってもらう機会を増やしていきたいですね。

成瀬さんが企画した、フルーツと音楽をメインにしたパーティイベント「Viva La Fruits」

東京青山のファーマーズマーケットでは、生産者の方々との新たな出会いもあった
生産者の思い、そして大変さも、
売り手が伝えていかなくてはいけません。
ファーマーズマーケットに出て、意識が変わりました。こんなにいいものがあるんだ、ということも再認識できたので、果物ということにヘンにこだわらず、米でも、野菜でも、食全体について「伝える」ことができるようになりたいんです。
売る方もそうですが、良い食材を提供することについては、継続しないと意味がない。生産者の方々が一生懸命やってくれてるのも分かりましたし、その大変さも分かります。そんな生産者側の大変さも、売り手が伝えていかなくちゃいけません。それが伝わらないと、消費者の方々も、単に安い食材に流れてしまう。でも、食べるということはとても大切なことですから、売る側もしっかり協力して、ちゃんと継続していきたいです。
実は、来年の夏頃までに店を新しくする予定です。これまでは場所を借りて、いろんな活動をしてきたんですけど、外での活動だけでなく、これからは自分の店を発信基地として、食べるものについてしっかり「伝えて」いきたいですね。フルーツたちをさらに深く勉強し、産地に出向いて、生産者さんたちともっと交流を深め、その想いや現状をお客様に伝え、フルーツを単に売るだけではなく、その産地の名所や文化、名物料理など、フルーツを通じて紹介し伝えていけたら面白いなぁと思います。
(2009/12/15)
フタバフルーツ ホームページ
http://www.futaba-fruits.jp/
