「ここきち」が選んだ旬の人にお話を伺いました。

神奈川県藤沢市出身。20代に秘書として働く傍ら料理教室に通い、30代前半でフードコーディネータースクールにて資格を取得。南青山のライフスタイル提案型カフェの立ち上げに携わり、カフェメニューの起案、自転車ツアーコーディネーターなどを担当。その後ベジフルティーチャー、野菜ソムリエ、雑穀エキスパートなど各種資格を保有し、現在はナチュラルライフコーディネーターとして「健康・環境・食」をテーマに活動中。
日本の食の風景「こころのキッチン」を守り、育てて行くために、様々な立場の、様々な人たちが、様々な活動を続けています。今回は、心もカラダもハッピーになる彩りのある“食”と、リラックスして楽しむ“自転車”のある生活を広く提案している、ナチュラルライフコーディネーター・佐々木恵美さんにお会いしてきました。

小学校時代の食育体験が、
地元を見直すきっかけに。

「ナチュラルライフコーディネーター」というと、何をしているのかわかりにくいかもしれませんね。基本的にはフードコーディネーター兼サイクリングコンシェルジュとして、小学校での食育授業を行ったり、料理教室を主宰したり、初心者に対する自転車ツアーを企画したりと、食と自転車という両面からシンプルなライフスタイルを提案しています。
 まず食育についてですが、2007年から「NPO法人 青果物健康推進協会」の依頼で全国各地の小学校へ出張し、ベジフルティーチャーとして食育の授業を行っています。
 授業内容としては、たとえば「野菜博士になろう」とか「朝ご飯をしっかり食べよう」とかテーマを決めて、地元で作られている野菜にはどんなものがあるのかを学んだり、理想的な朝ごはんを考えてもらったりしています。
 大人になると「田舎より都会がいい」と思いがちですが、これら食育の授業が、子どものうちに「自分たちは水がおいしくて、空気がおいしくて、野菜がおいしいという、恵まれた環境に育っているんだ」と地元を見直すきっかけになればいいなと願っています。
 いまは学校給食法も改正され、「地元の食材を使おう」という動きが全国で活発化しています。しかし、ある小学校の校長先生が「“地産地消”と言うだけでは子どもたちは給食を食べない」とおっしゃったんですね。「自分たちで野菜を育て、収穫する。そういう能動的な体験がないと、自発的に野菜を食べるようにはならない」と。
 まさにそういう好例があって、2008年2月に北九州市のある小学校に行ったときのこと。この小学校は食育にとても熱心で、全校で年間通じて20種類ほどの野菜を育てています。
 その冬は6年生が約300本の大根を育て、半分を豚汁にして食し、もう半分はご近所の方に販売しました。そして、その売上で日本の絵本を購入し、ラオスの言葉に翻訳されたシールを貼って、ラオスの子どもたちに贈ったのです。
 つまり彼らは小学6年生で、生産と販売と社会貢献と国際交流を行ったというわけです。このような経験が小学校時代にあるのは、非常に幸福なことだと思いますね。
ナチュラルライフコーディネーター 佐々木恵美さん
「都内で本日の朝ご飯を尋ねたら『サプリメント』という答えが出てビックリしました。地方と東京の子どもたちの生活の違いはやはり感じますね」と佐々木さん。写真は富山の小学校での食育風景。

“食”と“自転車”から学んだ、
「シンプルに生きること」。

 20代のころから食に興味があり、料理教室で日本料理を学びました。
 そのころは秘書をしていたのですが、やがて自分の好きなことを仕事にしたいと思いはじめ、30代に入ってからフードコーディネータースクールに通ったんです。
 期間は半年で、食のスタイリングやマーケティング、実際の調理のほか、ドラマの食事シーンの撮影やCMの料理撮影などを経験。楽しかったけれど、見た目以上に肉体労働でハードな仕事だとわかりました。実際に学校へは通ったものの「想像とは違っていた」と挫折をした同級生も多かったです。
 自分はというと、幸運なことに卒業後すぐに秘書兼フードコーディネーターの仕事に巡り会いました。
 そこではデザートに携わったのですが、「デザートだけではなく、食全般に関わりたい」という想いがつのり、次に南青山のライフスタイル提案型のカフェのオープンに携わることになりました。しかも母体が自転車のパーツメーカーだったため、「自転車」にも出会ったというわけです。勤めたのは2年ほどで、カフェメニューの起案や、さまざまなイベントを企画しました。
 この3年で学んだのは「シンプルに生きること」です。
 たとえば自転車は歩くよりも速いスピードで遠いところにまで行けて、でも車よりは遅いスピードなので風を肌で感じながらけ景色を楽しむことができます。そこで五感がフル回転する。
 実際一日で30キロ走るという初心者向けのツアーを行うと、参加者の顔が童心に戻るんです。そして「東京には緑が多いんですね」とか「ハロウィンの飾り付けをしている家を見て楽しかった」とか嬉しそうに感想を言い合う。感じることに敏感になるんです。
 それに車だと道を間違えるとイライラしますが、自転車だと道を間違えたから出会う光景にワクワクする。そしてたとえば青山、赤坂、六本木というそれまで点だったものが、線になり、面になり、街を感じることができる。
 食事も同じこと。食事というのはただの栄養補給ではなく、どんな季節に何を買って、どう料理するか、誰と食べるか、そういう複合的なことが楽しいですよね。つまり味覚だけではなく、五感でそれらを味わっているんです。
 このように食と自転車には、私にとって「feel=感じる」という共通項があります。その二つが、シンプルだけれども幸福な暮らしをもたらしてくれる。それを広く伝えていけたらなと思っています。
自転車との関わりはスポーツ用品メーカー「シマノ」のアンテナショップ「Life Creation Space OVE」の立ち上げがきっかけ。その後「Cycle Square 北参道」にてサイクルコンシェルジュとして活躍。現在はフリーランスとして、女性目線、初心者目線の「楽しむための自転車ツアー」や商品企画、各媒体の取材などを請け負っている。

生産者の想いをストーリーに仕立てて、
消費者に伝えていく。

 日本は働く女性が増えて、料理方法も「簡単・便利」が増えています。実際にTVの料理番組の担当者が「簡単・便利なほうが視聴率が上がる」とおっしゃっていました。
 では食文化としてはどうなのか。
 たとえば正月のおせち料理や1月の七草がゆ、節分の恵方巻き、ひな祭りのちらし寿司、春のお彼岸のぼたもちに秋のお彼岸のおはぎ、土用の日にはうなぎと、日本の料理は季節やイベントごとと密接です。そういうものも、やはり伝えていかなければいかないのではないか。
 それで昨年夏より、紀伊國屋書店や東急ハンズ、TIPNESSなどに置いてあるフリーマガジン『Green Mobility』(http://www.green-mobility.jp/)にて「食菜・発見!!」という連載記事を書いています。
 これまでに取材したのは、神奈川県三浦半島のサラダ紫(茄子)、群馬県昭和村のトマトベリー、群馬県富岡市のこんにゃく芋、神奈川県小田原市の湘南ゴールド(柑橘)など。生産者がどのように野菜や果物を育てているのか、どんな想いを持っているのか、そのストーリーをわかりやすく消費者に届けたい。食育の授業でも彼らの想いを子どもたちに伝えていけたらと思っています。
 私の「こころのキッチン」は「幸せの引き出しのあるところ」です。その幸せの出る引き出しをたくさんの人が心にイメージしてくれたら。または、引き出しを開けたら幸せはいくらでも出てくると知ってくれたらいいなと願っています。
(2011/2/10)


佐々木恵美「彩菜日和」HP
http://megkitchen.com/
フリーマガジン『Green Mobility』掲載中の連載記事「食菜・発見!!」で群馬県昭和村の農家を取材。「ここの農家の方々は本当に楽しそう。その心がトマトにも反映して、とってもおいしかった!」
料理教室「恵みの台所」では、有機野菜を中心に季節毎に旬の素材を使い、素材の味を引き出す料理方法を習える。包丁の使い方、野菜の選び方、保存の方法も学べる。現在の参加者は30代前後の女性が多いが、「男性も大歓迎」だとか。また英語による和食料理教室「Meg’s Kitchen」も開催中。