自家製の米、パン、野菜、みそ、ハーブ…。
すべて、若い姉妹を中心とした家族の手で

 国道409号沿いの現在の場所で店を始めてから、20年近くにもなるという「ポラーノ広場」。手づくり感あふれる平屋建ての店先には、地元の野菜や花が並べられており、常連さんだけでなく、引き寄せられるように入ってくるお客さんもちらほら。
天然酵母のパン屋さんであり、レストランでもある店の中は、照明を抑えてとても落ち着いた雰囲気です。「寛げる空間でしょう?私たちも時間が過ぎるのを忘れるくらい、ここでのんびりしてしまうんですよね」と‘お母さん’である戸田さんはおっしゃいます。自分たちにとって理想郷のような店にしようと、宮澤賢治の『ポラーノの広場』という物語から名前をもらって夫と始めたこの店も、今では3人の娘たちが中心となって店を切り盛りしています。本格的に農業を学んで家に戻ってきた姉のともえさんは、重機の操作も自由自在で、頼もしい存在。田んぼでは米を、畑ではじゃがいも、たまねぎ、にんじんなどから、ちょっと変わった季節の野菜まで、さまざまなものに挑戦しているのだそう。冬場には1年分の田舎みそも作って次の年に備えています。このように、店で出すメニューのうち、卵以外のものはほとんどすべて自家製。やることが多くて、とてもたいへんなのでは?と尋ねると、「いいえ。農家はすごく忙しい時期が確かにありますが、常にというわけでもないので、こうしてパンを焼いたり、季節の移り変わりを人一倍感じたりして、『私たち、農家のよさを味わってるね』っていつも話してるんですよ」。

ゼロから始めた天然酵母のパンづくり。
夢中で研究するうち、気がつけば自慢の味に

 店の入口に並べられた、天然酵母のパンや手作りのスイーツにも、つい目を奪われてしまいます。人気のパンをうかがったところ「これがおいしい、という好みが人によって見事にバラバラなので、『全部』ってことなのかな?」と。控えめにおっしゃってましたが、ほとんどのパンが人気商品という品揃えです。
パンづくりのスタートは、ゼロからだったとか。もともとパンが好きだったお母さんが、たまたま天然酵母のパンの本を見つけて、夢中になって読み始めたのがきっかけでした。「子どものころは、お母さんの作るパンは固くて、私たちはレンガパンって呼んでたんですけど、いつの間にかおいしくなってました」と笑う妹のいずみさん。今は娘たち全員がどの味も引き継ぎ、新しい味も開拓しています。特に定評のあるのはスイーツで、季節ごとにハーブを入れたり、ラズベリーや路地もののいちごを摘んでケーキにしたり。たくさん採れたときには贅沢に使えるので、収穫時期によっては豪華なケーキにも出会えるそうです。

お客さんに楽しんでもらうためには、
自分たちが楽しんでいることがまず大切

 ポラーノ広場は月曜、火曜が定休で、営業時間は10時半~17時半まで。「これが農家のリズム。自分たちが無理して接客をすごくがんばってみても、本来の農家のよさ、農家らしさは出ないんですよね。農家が何を提供できるのか、その構えを明確にしていくのが、長く続けていく上でとても重要だと思います」。
ともえさんといずみさんは、かつて地域で歌っていた父親の影響もあって、姉妹デュオ「ありっぱ」として、地域のイベントを中心に活動中。のびやかな歌声と素直な歌詞が好評で、店でも木曜と土曜の午後にミニライブを行っています。
「今、多くの人は、楽しむことと仕事が切り離された生活をしています。でも幸い私たちは、畑仕事やパンづくり、歌うこと…。それらすべてを、楽しみの延長としてやっている。お店をやったり、いろんな人と関わることで、この楽しさが他の人にも伝わったらいいなーと思っています。」といずみさん。
子どものころ、いずみさんは「パン屋さんの娘に生まれたかったな」と思い続け、一方で、お姉さんのともえさんはずっと、「喫茶店で働きたい」と言っていたそうです。最近になってそのことを思い出し、「あれ?今、その夢が叶ってる!」と2人は大笑い。賢治の物語と同じように、理想郷である「ポラーノの広場」はすぐ近く、どころか、わが家にあったことに気づいた、幸せな姉妹なのでした。
(レポート: r.osumi/2010-3-25)
千葉県の農家レストラン「農家を味わう店 ポラーノ広場」
店先で売られている地元の野菜や花は、仲間の5~6軒の農家でとれたものを置いている。季節感たっぷりのものが格安!
千葉県の農家レストラン「農家を味わう店 ポラーノ広場」
おまかせおかずセット600円。発芽玄米のご飯に自家製のみそを使ったみそ汁、平飼いでとれたゆで卵、小鉢、そしてこの日のおまかせは、菜の花とたっぷり野菜の炒め物。
千葉県の農家レストラン「農家を味わう店 ポラーノ広場」
天然酵母と国産小麦でつくった人気の菓子パンや食事パン。よもぎ、月見草、夏ミカンなど、身近でとれた季節のものを混ぜた特製パンをつくることも。
千葉県の農家レストラン「農家を味わう店 ポラーノ広場」
手づくりみそはひと冬に12樽くらい作り、1年使う。作りたてに比べて月日が経つと、次第にみその色が黒くなって味わいも少し変化する。
千葉県の農家レストラン「農家を味わう店 ポラーノ広場」
「ありっぱ」としても活動する次女ともえさん(左)と3女のいずみさん(右)。木曜、土曜日に店内でミニライブを行っている。地域のイベントに呼ばれることも多い。