「人々が自然の中で癒される場所を作りたい」
2700坪を開墾し、花やハーブを植え始めた

 ラベンダーやバラが咲く初夏の時期には、特に多くの人が訪れるという「モナの丘」。都市部に隣接するグリーンツーリズムの場として、農業体験をはじめ、収穫祭や食育講座など、さまざまな試みが行われている農園です。併設されている農家レストランがオープンしたのは2007年。レストランから見える農園の景観を楽しんだり、食後に庭を散策したり、テラスでお茶を飲んだり。ここでは誰もがゆったりとした時間を楽しんでいるようです。
 モナの丘の生みの親であるオーナーの桑田さんはこう言います。「遠い未来を想像したとき、本当に大切なものとはなにか、不要なものとはなにかを、ここでのんびりとお茶を飲みながら、漠然とした意識の中に感じ取っていただければいいかなと思っています」。
 広島の農家で生まれ育っただけに、土に懐かしさと癒しを感じていた桑田さん。65歳になった2002年、多忙だったそれまでの人生を振り返り、「そろそろ方向転換をはかって、土でもいじるか、と趣味で畑を始めたんです」。そんな矢先、桑田さんの転身を知った友人から、「大勢の人に食事の大切さや自然の大切さを勉強してもらえる場を作りたい」という相談を持ちかけられたことで、事態はまた一変。「人を集めてお祭りごとをするのが好きなんですよ」という生来の血が騒ぎ、一年ほど場所探しに奔走したのち、2700坪の土地にトラクターを入れて開墾。最初に育てたのは野菜ではなく、バラやラベンダーだったそうです。それは、人に見に来てもらう場を意識してのことでした。

「循環型農業」で生産した自家製野菜
そのおいしさを伝えるためのレストラン

 「農家にとっての基本は、いかに健康な土を作るかということです。それさえできれば、野菜は健康に育つんですよ」と語る桑田さん。そうした考えの末、堆肥を使った「循環型農業」にたどり着きました。食べ残した食物を残飯として捨てるのではなく、また土に帰してあげれば土も痩せないし、安全でおいしい野菜もできあがります。しかし、せっかくこうして丹精込めて作った野菜の良さが、なかなか世間に伝わっていきません。そこでつくられたのがログハウスのレストランでした。
 レストランで出す野菜は、ここで採れたものが大半。朝、野菜を収穫し、直売所で売るものと、調理で使うものに分けてから、下ごしらえを始めます。
 ここの看板メニューは、ネパール人シェフが作った特製カレーとナンのセット。薬草の専門家から、薬草と香辛料を使ったカレーはとても身体にいい、というアドバイスを受けたことがきっかけで、本場の職人を呼び、日本人の口に合う特製カレーを開発したそうです。農家レストランでネパールのカレーとは、ちょっと不思議な組み合わせ? いえいえ、その場で食べてみると、新鮮な野菜サラダのおいしさがより引き立ち、カレーのスパイスで身体が元気になってくるような気がします。

自然に逆らわないで生きていくのが一番の健康方法。
土に触れてみれば、自らのエネルギーもわいてくる

 一般の人が体験できる体験型農業をやりたい、というところからスタートした「モナの丘」。現在は相模女子大学と連携して、食に関するプロジェクトを進めているそうです。また、大人たちに食の安全や教育をするよりも、子どもたちを集めて作物を植えたり、育てたりしてもらうことの方がむしろ浸透が早いと、子ども向けの講座も開かれています。野菜はどのようにしてできるのか、どんな形をしているか、どんな花が咲くか、収穫の季節は……。そうしたことを、自分で体験すれば、得るものも大きいというわけです。
 桑田さんは、野菜も人間も、自然に逆らわないで生きていくことが一番の健康方法だと考えています。たとえば日が暮れたら寝て、夜が明けたら起きる生活。子どもたちも、土に触れるうちにエネルギーをもらって、元気になって帰っていくそうです。そして農業の未来についても、「これからは効率性、生産性を重視しすぎるのではなく、体にいいものを作るために何をすればよいのかが、最も重要なこと」と、最後まで熱く語って下さいました。

(レポート: r.osumi/2010-05-07)
夏場はテラス席、冬場は窓からの景色がよく見えるカウンター席がおすすめ。レストラン内はログ作りであたたかな雰囲気。
神奈川県の農家レストラン「モナの丘」
この日の日替わりランチ、「モナ畑のパスタ」。見た目も楽しい色とりどりの野菜は、今朝収穫されたばかり。
神奈川県の農家レストラン「モナの丘」
新鮮な野菜と体を温めるスパイスをふんだんに使ったカレー。ナンは本場の職人ならではの味。
神奈川県の農家レストラン「モナの丘」
ランチの後は、ハーブ園やバラ園など、自然豊かなモナの丘のぶらり散策がおすすめ。
神奈川県の農家レストラン「モナの丘」
「野菜作りは土壌作り」という教えのもと、丹念に畑仕事に励む若いスタッフ。食品製造過程で出る残渣を原料としたアミノ酸液肥を用いての循環型農業を展開。
神奈川県の農家レストラン「モナの丘」
店先の販売スペースでは、採れたて野菜がずらり。スタッフがそれぞれに愛情あるコメントを付けている。